予定の病院ではなく、急遽ビジネスホテルで1泊することにしたものの
まったく、予測できない新血管内治療後の免疫応答の症状に、頭の中
では、対策は立ててはいるものの、心理的には緊張していた・・・
彼の「入院拒否」の気持ちに寄り添ってみたものの、何ひとつ予測も
つかない・・・そのうえ、ここはホームグラウンドではない、右も左も
わからない・・大阪の地である・・・
もちろん急変し、重篤な状態になれば救急車を呼ぶしかない!とも
考えてはいたけれど・・・すべてのことに関して、勝手が違うのである。
いざとなれば、クリニックの院長先生の携帯に連絡して 指示を
受ければいいんだとは思いつつも、予約していた病院を かってに
すっぽかしている手前、少し気がひける・・・
そんな事を考えながら、クーリングを続ける・・・
なぜ私の気持ちが不安を感じるのか・・・
それは、治療後の免疫応答期間の発熱や治療部位の痛みに関しては
できるだけ、麻薬以外の薬→要は消炎解熱鎮痛剤の服用は避ける!
というのが基本とされているからだ・・・
免疫たちが頑張って働きかけている所に、外部(薬)によって力を
貸すと免疫細胞が活動することをやめてしまうという理論である。
自然治癒力の働きの理論には、フコイダン療法を取り入れた時に
彼も私も、納得していた・・・その延長戦上での新血管内治療の選択
でもあった・・・
その気持ちが根底にあるから、彼も発熱に耐えている・・・
そして、治療部位の痛み・・特に右肩の近くの原発巣の所と
胸膜播腫→横隔膜の部分・・薬を入れたところが妙な痛みに襲われて
いるようで・・手をあてて押さえている・・・
イメージとしては、おそらく癌細胞の死滅→その残骸をマクロファージが
懸命に処理している・・・
そんなイメージが浮かんでくる・・・心というのは不思議だ・・
自分の中で納得する図式ができると、改革された意識は ある種の
信念となる・・・
新血管内治療を受けて、痛みに関する観念が変わったのである・・・
もちろん、癌の痛みに関してはモルヒネは欠かせない薬ではある。
ただ発熱に関しては、この時を機に解熱剤を安易に服用しなくなった。
基本的にはクーリング・・そして発汗を促して清拭・・水分補給
この感覚を、私自身医療の現場に携りながらも、彼が癌と診断され
治療を続けていく中で・・本質的なものを見失いかけていたのである。
人間の体は、私達が思ってる以上に精密な、そして神秘的なDNAの
プログラムが埋め込まれているのであるという事・・・
薬にだけ頼るのではなく、自分の中の生命力、そして自然治癒力を
信じることから始めなければいけないという事を痛感したのである。
彼の熱は、結局 丸2日続いた・・・
けれど免疫反応的には、思ったよりも応答が良くないように思えた・・
師長さんから、治療当日より何度か状態を心配しての電話を頂いた・・・
彼の気持ちを尊重したとはいえ、「孤軍奮闘」的状況にいた私には
すごく心強い支えであった・・・
3日目の朝には、一緒に朝食にも行けた・・それまでは、無理を言って
お粥と梅干を用意してもらい、部屋で食べては時間内に下膳していた。
そのほかは、ホテルの前にあるコンビニや、歩いて7分ほどの所に
あるスーパーに果物やアイスを買いに行っては 食べれる分だけ
食べさせてあげていた。缶詰状態って・・まさしくこんな状況のことを
いうんだろうなと思っていた・・・
一緒に朝食を摂れる喜びを、こっそり噛み締めていたら・・
体調の戻った彼が、「ごめんな・・ひとりでご飯食べに行かせて・・」と
まっすぐな眼差しで語りかけてくれたのが、今でも印象に残っている・・
さぁ、いよいよチェックアウトだね・・・どうやって大分に帰ろう・・・
急に現実的な問題が残っていることを思い出したのである・・・