【痛みを部分ではなく全体として見る】

ー痛みは人間丸ごとの問題ー
痛みというものは、ある臓器と中枢神経系、両者をつなぐ
抹消神経の範囲で起こる出来事です。
痛みは、体の中の ある特定の部分だけの問題と考えられ
がちですが、実際には人間丸ごとの問題なのです。

「痛みは組織の実質的、または潜在的な傷害にともなう
不快な感覚情動体験、あるいは このような傷害を言い表す
言葉を使って述べられる同様な体験」

体験ということは、何よりも人間丸ごとの問題であるはずです。
私たちの、現代の医療の中核をなしている近代西洋医学は
人体というものを各構成要素に分解し、そのひとつひとつを
克明に見ていく医学です。

対象がなんであれ、克明に見ていくことは近代の誇るべき態度
ですが、その対象があまりにも構成要素のみに限局してしまった
ことへの反省から、ホリスティック医学の概念が生まれました。


ー臓器と臓器の関係性に注目ー

ホリスティック医学というと、人間全体を見る医学ということになり
ます。ひと口に人間全体を見るといっても、ただその人の隣りに
立って、全体を視野に入れて ぼんやり見ればいいというものでは
ありません。
これまで、人間を少しでも包括的に捕らえようとするものに、
近代西洋医学の範囲で起こった心身医学と東洋医学があります。

心身医学は心身は一体であるという考えから、心と体のつながりに
注目します。東洋医学は体全体の歪みに注目し、臓器と臓器の間の
関係に その原因を求めます。

たとえば、中国医学を理論的に支えている陰陽五行学説です。
陰陽五行学説は中国の戦国時代に完成された哲学ですが、
いっさいの万物は陰陽の二気から成り 木・火・土・金・水の五元要素
から成り、それらの消長によって、世の中のすべての現象を説明しよ
うとするものです。つまり、物事の関係を対象とする学問です。
このように、心身医学にしても、東洋医学にしても、その注目するとこ
ろは目に見える臓器ではなく、臓器と臓器との関係、あるいは繋がり
ということになります。

ー生命に直結する物理量 「気」ー
(臓器と臓器の)関係、繋がりというものは、どこに存在するかと考え
ると、物と物との間にあることはあきらかです。
胸の中も、腹の中も、実は隙間だらけなのです。肺胞の中は言うまで
もなく空間ですし、胸壁と肺の間にも空間があります。横隔膜と肝臓の
間、肝臓と胃の間・・・と、あげていけばきりがありません。
この空間を利用して手術という治療法ができているのですが、手術の
時は対象の目に見える臓器にばかり目がいってしまい、これらの空間
を見ようともしません。何も無い空間として無視してきたのです。

体の中の空間には、目に見えないさまざまな物理量が存在します。
空間に連続して分布する物理量・・たとえば、ある空間に電気が分布
しているとき、「電場」といい、磁気なら「磁場」といいますよね・・・
文明は、この電磁場を利用して成り立っているところが大です。
私たちの体のなかの空間にも当然 電磁場は存在します。
予測の段階ではありますが、ほかにも生命に直結した物理量・・それが
中国医学の基本概念である「気」です。

つまり、電磁場と同じように 気場も存在するのではないか・・さらに「気」
以外の 生命に直結する物理量もあるのではないか・・・
とりあえず体の中の(場)を「生命場」と呼んだとして、この「生命場」に
臓器と臓器の繋がりが存在することになります。
「生命場」は皮膚で囲まれた孤立したものではなく、外界と自由に交流
しているわけですから、私たちの体は、「場」のなかに臓器が浮いている
状態とみなすことができます。

この「場」に注目する医学がホリスティック医療といわれるものです。
東洋医学が注目してきたよりも、もっと科学的に、そして もっと「場」の
本質に迫りながら、臓器をも包括して、そして外界の「場」をも視野のうち
に入れて、生命の謎を解き明かしていく医療ということになります。

痛みは、身体的にも精神的にも極めて大きな生命現象です。
神経系の問題として片付けるには、あまりにも大きい・・というよりも
生命の本質的な部分をになっている現象です。だから、「痛み」は
ホリスティック医学の対象ということになります。

                     引用著書 「痛みをとる大事典」