明らかに 心も体も免疫力の低下が顕著だった・・・
もしも・・私が1看護職の人間として彼の全体像を捉えることが
できたなら、この時点での彼の状態は完全なるターミナルの・・
しかもカウントダウンできるような臨死状態に近い状態にいたと
冷静に見つめる事ができたかもしれない・・・

息子さんの入院・・手術で、自分のパワーを使い切ったかのように
彼のレベルは落ちていった・・
「kyoちゃん・・酸素頼んでくれるか?」最後の最後まで躊躇っていた
酸素を自ら頼んでくれという彼・・・
呼吸苦は、かなり深刻に押し寄せてきたのだろう・・・
在宅酸素は、彼の中でのひとつのボーダーだった。
私は、どう言って彼を説得させよう?と考えていたHOT開始のタイミング・・
それを彼自身が求めてきたのだ・・「キツイんだ」・・そう思った。

私は、すぐに ゆふみ病院にTELして 在宅酸素の開始を申し出た。
院長先生が、すぐに対応してくれ処方箋を貰いに行き、その日のうちに
業者の方がHOTを持ってきてくれた・・・

HOTとは、Home Oxygen Therapyの略で在宅酸素の事を総称としていう。
慢性呼吸不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんが主に使用され
ているもので、在宅で使用するのは 酸素濃縮装置というものが主です。

空気は約21%の酸素と、78%の窒素、そして1%の その他のガスから
成り立っていますが、この装置は室内空気から窒素を分離して、酸素を
濃縮して連続的に発生させ、約90%の酸素濃度を保っています。

このHOTをレンタルして、どのくらいの費用がかかるのかというと
医療機関(主治医)が患者さんの病状を検査し、処方をおこなった時に
支払われる技術指導料と、患者さんの病状や生活環境に合わせて
貸し出される酸素吸入用装具の加算料があります。

在宅酸素療法は原則的に健康保険が適用されますが、酸素代を含め
実際にかかる医療費の3割が患者さん負担となります。(老人保険適用
の場合は1割or2割) 1番多い形態である酸素濃縮装置と携帯用酸素
ボンベを使用した場合、在宅酸素指導管理料25000円+装置加算料
46200円+携帯用装置加算料9900円=81100円で 患者さん負担
は24330円です。

対象となる患者さんは、動脈血酸素分圧55Torr以下(SPO2だと88%)
もしくは60Torr以下(SPO2で90%)で睡眠時or運動負荷時に著しい
低酸素血症をきたす者という基準がありますが、彼の場合「肺癌末期」
それだけで十分な理由だったんだと思う・・・

「呼吸苦」・・・「閉塞感」・・・これらは「痛み」よりも辛すぎる・・・
「辛い」という言葉では言い表せない気がする。
空気を吸っても吸っても、肺は その空気を全身に送れないのだから・・

彼が亡くなって、しばらく経った頃見た・・彼が長男に送ったメール・・
在宅酸素を始めた日に送ったものです・・・(原文そのまま)

 おはよう
 今日、寝そべってみました。
 ミノムシのように 這うこともできなくなっていました・・・
 もうすぐ全身麻痺になるんだろうと 不安で仕方ありません。
 そうなる前に1度会いに来てください。

何度読んでも、涙がでてきます・・・
長男の帰宅予定日の1週間前に送られたメールでした。