癌細胞の進行に伴い、思うように動かない自分の体・・・
そんな状況の中でも、胆石OPEを受ける息子さんのことを
心配して・・心配しすぎて・・自分の痛みとして吸収する彼・・

私も 自身の子を持つ親として・・痛いほどに伝わってくる・・
心配しても、どうすることも代わってあげることもできないことは
重々わかってはいる・・・ペインコントロールを始めたころからは
痛みを抱えている彼と代わってあげたい・・そう何度も思ってきた。

代わってあげることはできない・・という当たり前のことかもしれない
現実を、ふと冷静に受け止められた時・・・
できないこと・・不可能なことを考えて、心をいっぱいにするよりも
自分にできることをやろう・・そう思った。

人のことには、冷静に・・客観的に・・心をこめて見つめられるのに
自分の事となると、どうも脆いものだと実感した・・・
彼が癌になって・・共存してゆく中で・・もしかしたら私は彼の癌に
対して、癌である彼に対して、客観的でなく主観的に心に捉え・・
彼の残された人生を、自分に当てはめてばかりいたのかもしれない

ホスピスにたどり着いたあたりから・・
自分の力ではどうしてあげることも出来なくなってきた彼の痛みに
対して、どうしてあげることもできないのに自己葛藤ばかりしていた
「側にいてくれるだけで痛みが和らぐんだ」
そういう彼の言葉に、逆に支えられていたように思う・・・

「祈ること」・・そうすることしかできなかった。
時に彼の寝ている表情には、「悟り」のようなものを感じたりもした。
不安や恐怖・・さまざまな感情が・・寄せては返す波のように
繰り返すなかで、目覚めれば彼は「幸せだよ」必ずそう言った・・・

「祈ること」・・「側にいること」で心の免疫力をUPしてあげれれば・・・
それが何よりの、唯一の「魔法」なのかもしれない・・
そう思えた・・