ここ数回、痛みについての記事で引用させて頂いている
「痛みをとる大事典」という本の巻末に書かれていた
<代替療法>取材・執筆にあたって・・・より・・・

このルポライターの小原田さんという方は「ガンを治す大事典」の
取材で、丸1年かけて全国を歩き 健康食品・気功療法・養生施設
など、西洋医学以外の ガン治療を見て回ったそうです。

手術や抗がん剤・放射線治療などの西洋医学的な治療からすれば
食事や気功といった療法は非科学的とされているわけですが、西洋
医学で見放された、かなり進行していると診断されたガン患者さんが
治っているという現実に、かなりの衝撃をうけたそうです。

この体験を機に、小原田氏は ガンの特効治療、特効薬探しを始めた
そうで、「こんな治療法がある」と聞けば、治療者のもとへ飛んで行き
画期的な健康食品が出たと聞けば、資料を取り寄せる・・といった事を
何かにとりつかれたようにやっていたそうです。

ところが、ある時から「ちょっと違うんじゃないだろうか」という思いが
湧いてきたというのです。
さまざまな代替療法を見ていると、確かに たくさんの末期といわれる
状態のガン患者さんが治っていました。しかし・・・治る人ばかりが
クローズアップされるけれども、治らない人も同じくらいたくさんいるの
です。さらに、一時的に治っても、また再発する人もたくさんいる・・・

あるいは、代替療法が世間に受け入れられるようになってきても
ガン患者は いっこうに減ってくる気配はない・・・
減るどころか、逆に増えているのです。ガン以外にも、たくさんの
難病が増え続けている・・・
この現実を知った時、「いくら特効薬・特効治療探しをしても、結局
病気が増え続けるという状況は変わらないんじゃないだろうか」と・・
ある種の空しさを感じ、その空しさは、特効薬・特効治療などはない
んだという重要な結論をもたらしたという事でした。

日本ホリスティック医学協会が、ホリスティック医学とは何か・・・と
定義していますが、その定義のひとつに「病気を自分への警告と捉え
人生のプロセスのなかで病気を絶えず気づきの契機として、より高い
自己成長・自己実現をめざしていく」という項目があります。

それまで漠然と読んできたこの定義だったけど、特効薬、特効治療探し
の空しさを感じた途端、この定義に書かれている意味の重大さに気づく
ことができたのです。
「病気は悪者じゃないよ」という囁きが、自分の内部から聞こえてきたよ
うな気がしたのです。病気を悪者として、その兆候があれば叩いてしまえ
という発想では、きっといつまでたっても、病気とのいたちごっこは続くの
だろうと強く感じたのです。じゃあ、どうすればいいのか・・・

病気が警告なら、いったい何を警告しているのか・・まず耳を傾ける必要
があるでしょう。いちばん大切なのはライフスタイルだと思います。
食事療法は毎日の「食」の大切さを教えてくれています。
病気を治すために何を食べればいいかというのではなく、食生活が健康
にいかに関わっているかを、食事療法から学び取ることが必要でしょう。
そして、自分の生活のなかに、学んだことを取り入れていくことです。
病気を警告と捉えるならば、この病気が治ったら好きなものを腹いっぱい
食べてやるというのでは、あまりにも寂しい発想だと思います。

気功は、人や自然など・・自分を取り巻く環境に対する感じ方を変えてくれ
ます。自己中心的な生き方をしていた人が、まわりに気を配れるように
なったということは よく聞くことです。いつも夜更かしをして、朝は出勤時間
ギリギリまで寝ていた人が、気功を始めたら早寝早起きをするようになった
という例もたくさんあります。健康食品でも、その商品を通して 人間関係が
広がり、生き方が非常に前向きになった人もいます。

あるいは、極端な例だと、何もしないことを指導している医師もいます。
毎日毎日、何かに追いつめられているように生きている人の多い現代
です。病気になれば、あの治療法、この治療法という具合に 治療法に
追いかけられる。そんなストレスをなくすには、何もしないほうがいいと
いうのです。毎日、好きな事をしてのんびりと暮らすのが治療です。
あくせくする生き方から、のんびりと暮らす生き方への変換が治療という
面でもいい結果がでています。

成分がどうだとか、動物実験でこんな結果が出たといったことも、決して
不必要だとはいいませんが、病気との関わり方は それだけでは不充分な
気がします。 病気のきっかけとして、ストレスにがんじがらめになっていた
自分を解放したり、攻撃的に人とつきあっていた生き方を、もっと平和的な
ものに変えたりといった「生き方の転換」が求められているように思います。

「痛み治療」についても「病気は警告」という視点から取材しました。実際に
この本を手に取る方には、「そんな悠長なことは言ってられないんだ!とに
かく この痛みをなんとかしたいんだ!」と言われるかたも多いでしょう。
しかし、安易に痛みを取ることだけに走ると、思わぬ副作用に苦しんだり、
痛みの奥に隠されている重大な病気を見逃すことにもなってしまいます。
本書で紹介したものが、すべてではありません。 痛みを治す治療法なら
いくらでもあるはずです。あまり自分を追いつめず余裕をもって自分の痛み
が何を警告するものか、「痛みが発する声」を聞いてくださればと思います。