在宅ケアにもっていきたい!そう思ってから3日後・・
持続性静注で行なっていたモルヒネの投与を
経口投与に・・・そして、翌日には点滴がフリーになり
晴れて自由の身になった彼は嬉しそうだった。
もちろん、酸素もフリー!

点滴投与で、一応安定していたモルヒネ量を
経口投与量に換算し、オキシコンチン60咫滷/日
ケタラールシロップ×3/日
夜は眠剤なしで!
レスキューは以前と同様、塩酸モルヒネ錠マルピーを屯用で・・

点滴フリーになって嬉しいのか、この日は何度も何度も
「ラウンジに行こうよ」と言い、暖炉の前でコーヒーを飲み
クリスマスツリーを眺め・・窓ガラス越しに庭を眺める・・・

突然、「トロが食べたいなぁ」と彼が言い出す・・・
私が「ひとりで、お留守番できるんなら買ってくるよ!」と言うと
しばらく考えてた彼は、「できるよ!買ってきてくれるか?」
そう言って笑っている・・・「よっしゃ!行って来る」
まるで、子供に言うようなやりとりだね・・・

私は、担当の看護師さんに1時間ほど出かけてくることを伝え
彼の子守り(笑)を頼んだ。もちろん、看護師さんは快く承諾!
「kyoさんも、ずーっと病院の中ばかりいるから・・彼のことは
心配しなくていいので、たまにはゆっくりしてきて下さいね」
そんな温かい言葉をもらい、久しぶりに街へ・・・

街はいつのまにかクリスマスモード一色
賑やかだった・・・ちょっと奮発して美味しそうなトロをGET!
美味しそうな苺も、ついでに購入・・・
ふと、彼へのクリスマスプレゼントを何か見てみようかなぁ・・
そんな想いがよぎった瞬間・・彼からメールが・・・

「トロは釣れたの?トロだけでよいよ!寄り道しないで早く
帰ってきてね!」・・・思わず周りを見渡してしまった・・
近くにいるんじゃないかと・・・(汗)
私の性格をお見通し!笑ってしまった・・・
「今、トロを釣ったから・・すぐに配達に伺いまーす」と返信し
車を停めていた自宅まで急いで戻る・・

自宅のすぐ側にある遊歩公園には、大分ファンタジーといって
クリスマス時期前後、約1ヶ月間数百メートルに渡って
幻想的なイルミネーションが点灯されている・・・
週末には多くのカップルがイルミネーションをバックに写真を
撮ったりしている・・・
私たちは毎年自宅のある8階からイルミネーションを眺めていた
彼にも見せてあげたい・・・
1日でも早く、家に帰れるよう頑張ろう・・・
そう思いながら急いで病院に戻る・・・

彼はレスキューを飲む事もなく、テレビを見ながら
おりこうに過ごしていたみたいで・・・
私が帰ると、トロよりも薬よりも先にまずは「手をちょうだい」
そう言った・・・

彼には・・今食べたいものよりも、クリスマスプレゼントよりも
自分の命・・生かされている命と寄り添ってくれる愛が
何よりも大切で・・必要なのだと・・・

癌と共存していくには、治療薬よりも「頑張って」という励ましよりも
痛みを感じる時・・不安になった時・・心が負けそうな時・・
孤独を感じる時・・すべてのものが愛しくて切ない時・・
側にいて、寄り添う心・・共有する優しさ・・思いやりが
何よりの瞬間の希望につながるものなのだと感じた・・・

この日・・午後からその年初めての雪が降り出した・・
クリスマスは自宅で・・家族みんなで迎えたい
在宅ケアへの想いは雪と共に降り積もっていった・・・