奇跡的に、肺炎による危篤状態を乗り越え
3日間の行き先不明の旅から 還ってきた彼・・・

ただ・・・
体の中では いったい何が起きたのだろう?
そう思えるほど、彼の容貌は変わっていた・・・
肺炎を起こし、免疫力が低下している間に
癌細胞が、一気に栄養を求めて増殖したのだろうか・・

彼であって、彼でないような・・不思議な感じがした・・・
数日間の寝たきり状態による筋力低下は当然ながら
顔も変わった気がした・・・

何だか、「可愛い」
彼と私は、年齢が14歳離れていて
時々、お父さん?と間違われることもあったりして・・
彼は「やんなっちゃうなぁ」と苦笑いしていた・・・

だけど、今は・・・子供のように見える・・・
新しい命を授かったように思えた彼だけれど・・・
癌は抱えたままだった。
抱えているというより、癌で構成されているかのようだ。

そんな彼の痛みの出現への対処は
「ペインコントロール」というより
「疼痛緩和」という言葉のほうが的確な気がした・・・

痛みが強い・・・取れにくい・・・
この時点では、痛み止めは経口のオキシコンチンから
塩モヒによる静注点滴に変更されていたので
管理はしやすいようにはなっていた。
レスキューも点滴で定量を早送りするものなので
はたから見れば、直で血中にたどり着くという理屈からして
確実性があるように思えた。
それでも、痛みは不定期に出現する・・・

ボルタレンの代わりにロピオンという白い点滴が側管から
入れられる・・・これが思ったより効果があり、彼は「白い薬、
白い薬」と言ってお気に入りの様子!
牛乳のような・・母乳のような・・(笑)心に栄養も届くのかな?

危篤を乗り越えてから1週間が過ぎたけれど、
ペインコントロールは安定しない・・・
院長先生の勧めで、ケタラールシロップを使ってみることに・・
ケタラールシロップとは、いわゆる麻酔薬である・・・
麻酔薬を、カキ氷等に使うシロップで希釈したものである。

ペインコントロールって、簡単にできるものだと思っていたが
ここにきて、難しいものなんだということを改めて実感した。
もちろん、彼の場合だが・・・

癌の種類、発生している場所、体力、気力、全身状態も含め
みんな痛みの現れ方・・感じ方は異なるのだということ・・・

病気の苦しみは、自分の体がまだ病気と闘っているからあるわけで
闘う力が無くなれば、苦しみは消えるものだと・・何かの本で読んだ
ことがある・・・

彼の中に存在する自然治癒力は、まだ癌と闘っているのだ・・・
彼が彼らしく生きようとしていることが、痛いほど心に伝わってくる
薬の処方は院長先生にお任せして、私は彼の体に触れていよう・・
心を丸ごと抱きしめていよう・・・

彼が彼なりに生に執着してくれている以上・・・
私は、彼に執着したいと思った。