肺炎を起こしながら・・平らな姿で よく寝ている彼・・
手足の浮腫も減った気がしていた。
時々「ぽッ」なんて言いながらも、真夜中痛みで起きることも
なく・・本当によく寝ている・・・

私も安心して少し眠りについた・・・

5時半・・トイレに起きた彼は、トイレまでの数メートルの移動後
呼吸難を起こしていた。痰が詰まっている感覚があるようなので
ネブライザーをかけてあげたが・・うまく排痰できずイライラしてる。
30分程して、少し落ち着いたのかウトウトし始めた・・・

体の動きがすごい・・・夢の中で泣いている・・・怖がっている・・・
闘っているの?何がいるの?
明け方3リットルに上げていたO2を4リットルに変更・・・
この時点でカニューレから酸素マスクへ・・・

何だかドラマを見ているような変な感覚だった・・・
彼はテレビで酸素マスクをつけたシーンを見るたびに
「俺も最期は、あんなふうにマスクをするようになるの?」と
気にしていた。私は「そうだね・・肺癌に限らず、呼吸器疾患の人は
どうしても呼吸苦が起きるから・・・」そう言うと「マスクは大げさだから
嫌だなぁ」と言っていた・・・

現実は、彼は意思を伝えることもできない・・・閉塞感に喘いでいる
KT37.6・・・30分後O2を4,5リットルに・・・
同時に持続性皮下注に変更・・・
院長先生から・・息子さんを呼んでいたほうがいいと言われる。

問題は彼の長男だった。海上自衛隊に勤務する長男は
航海の最中だったのだ・・今何処にいるのか・・・
とりあえず、緊急連絡先に連絡をいれてもらう・・・

私の子供にも緊急連絡をし、すぐに来るように伝えた。
私たちは、迷った揚句・・彼の実のお姉さん、弟・・友だちには連絡をし
なかった。
それはホスピスに入院する前からの彼の強い希望だったから・・・
彼は自分の最期の姿は、弱った姿は見せたくないと強く願っていた。
みんなに非難されるのは覚悟の上で、彼の意思を尊重したかった。

彼は闘っている・・闘い続けている・・・院長先生は何とか長男が
くるまでは・・と全力で薬の量を調整してくれている。
この時点で塩モヒは皮下注から静注点滴にしていた。
院長先生は今夜がヤマだと言う・・・

このまま逝かせてしまうことなんて絶対にできない!
このホスピスには、ペインコントロールのために来たはず・・・
ここで今最期を迎えるために来たんじゃない!
絶対に諦めない!
彼の手を握り締めながら・・私の心のメッセージを伝える・・・
ずっとずっと伝え続けた・・・
「祈り」・・そう、彼の魂へ祈り続けた・・・
「違うでしょ・・」「まだやらなきゃいけないことあるでしょ・・」
「「言わなきゃいけないことあるでしょ・・」
「大阪行くんでしょ・・」「クリスマスの花火見に行くんでしょ・・」
  祈り続けた・・・祈るしかなかった・・・