「これで最後!」・・・そう思って受けた新血管内治療・・
治療を終えた彼は、憔悴しきっていた・・・
一瞬ではあったけれど・・・ハートレートの状態の時
このまま死んでしまうのではないか・・とさえ思えた・・
そのくらい・・
今まで1度も見たことの無いような辛そうな表情をしていた。

癌そのものの痛みで、辛い日々を過ごしているのに
もうこれ以上、痛い想いは・・・
・・もういいよね・・・
リカバリールームで彼の手を握りながら・・そう思った。
温もりのある手に感謝した・・・

この治療中、右肺の癌の進行は顕著だった・・・
「最近、声が出にくいんだ」と言っていたのも
気管支への転移が症状のひとつとしてでてきたものだろう
横隔膜の癌も べったり蔓延っていて
完全に癌の方が免疫を押さえ込んでいると実感した・・

それは、この辛かった治療後に・・免疫応答がなかったという
現実・・明らかな熱発も見られず・・
痛みも癌の痛みに、治療の痛みが加算されてるといった感じで
麻薬の量も増えているため、判断はつかなかった・・・

大分に帰ったら・・・
とりあえず・・ ペインコントロールのやり直しから始めよう・・
痛みによって心も体も衰弱していっている。
この頃、彼は直接は言葉にしなかったけれど、
送られてくるメールに・・自分のことを「生きる屍」と書くように
なっていた。
「このまま、ゆっくり動けなくなるのかなぁ・・」
「脳にも転移したら、俺は廃人になるのかな・・」
痛い時には・・・どこまでも不安ばかりが増大していった

そのなかで、いよいよ動けなくなった時のことを考えては
現実問題で、やっておかなければならないことを片付けようと
書類や衣類の整理を始めた彼・・
書類はまだしも、衣類や靴等を処分しようとする姿は
私が耐えられず・・「やめてほしい」とお願いした・・・

「でも、できるうちにやっておかないと・・そのうち何もできなく
なっちゃうんだよ・・kyoちゃんが後で整理するの大変だろ?」
と言う。
「そんなこと考えなくていいよ!見てるの辛いよ」と言うと
「俺が死んだ後・・君に荷物を捨てられることを考えると・・
そのことが俺には辛いんだよ。俺との想い出を処分されるようで・・
しかたないことなんだけどね・・」

彼の想いの深さに、何も言えなかった・・・

痛みを感じない時間が、少しでも続くように・・・
そして彼の人生に、ゆっくりゆっくり寄り添っていこう・・・

私は再度、仕事をやめて 残された時間を
彼と共に・・彼の痛みと共に過ごしていこうと決意した・・