「諦めない!」そう思いながら・・・
彼の心と体の歩調にあわせて、わずかな期間
何もしない・・静かな時を過ごした・・・

もう1度、熊本に行きたい・・・と彼が言った
1年前、抗がん剤治療を終えた頃・・
私の誕生日プレゼントとして・・娘と内緒で計画し
連れて行ってくれた「オーベルジュ森のアトリエ」という
ペンションだ・・・

あの時の感動が甦ってきた
ペンションに着く ぎりぎりまで行き先を教えてくれなかった彼
あの頃は、新たな余命告知された直後で・・
彼は、少しでも多くの想い出を作りたい・・・と
必死で私を いろんな所に連れて行こうと、
ある意味、生き急いでいた・・

彼には彼の・・・さまざまな人生の思い出があり・・
私にも私の・・・さまざまな人生の思い出があった・・

そんな、お互いの人生の積み重ねの中で
ひとときの同じ時間を共有することができた偶然・・・
違う・・この頃の私たちには・・この出逢いは必然だった

わずか5年という時間ではあったが・・・
出逢った時から・・・
今まで お互い経験したことのない凝縮された時間
経験したことのない心の揺れを感じあっていた・・・

心から信じあうことの意味を求め、傷つけあうこともあった
どんなに傷つけあうことがあっても
それでも、一緒にいたいと思う気持ちが強くて
どうしても、一時的な感情で
諦めようという気持ちにはなれなかった・・・
それは、彼も同じだった・・・

いつでも、彼は全力で、1等賞の愛を注いでくれた・・
いろんな問題を、やっと解決し・・・
「籍を入れるか・・」と、彼が言葉にした直後での 癌告知だった

私もショックを受けたけれど・・
おそらく彼は、言葉にこそ表すことはなかったけれど
絶望的な思いで いっぱいだっただろうと思った・・・

その時の、本当の気持ちは最後まで語らなかったので
私は・・彼が言葉で伝えてくれる気持ち・・想いを
自分に置き換えて感じ・・そのうえで彼の性格に重ねて
そして彼の希望や想いに寄り添い、叶えられるように
自分の全力を尽くすしかなかった・・・

彼は、その頃の自分の体の状況を1番わかっていた・・
熊本に行きたいという気持ちも本当だったと思う。
けれど、熊本が体力的にも精一杯だというのも本当だった・・

オーベルジュは1年前とは また違う色と香りがした・・
偶然にもコンドミニアムの部屋は 同じ部屋だった・・
ただ違うこと・・・
それは、彼と一緒に星空を見れなかったこと・・・
麻薬が効き過ぎていて、珍しく深く深く眠っていた・・・
夜中の3時まで、5時間近くも眠っていたのだ・・・
続けてこんなに眠る事は・・その頃の彼にはありえない事だった

私は彼が目覚めるまで、ベランダで流れ星を数え続けた・・・
ひとつひとつの流れ星に・・いろんなシーンが重なりあった・・・
彼が熟睡できることを 素直に喜べる自分がいる反面
彼と星を見れない現実を 寂しいと思う自分もいた。

18個目の星が流れた時・・・「kyoちゃーん」「どこにおるん?」と
探す声がした・・・急いで部屋に入ると、痛くて目覚めた彼が
佇んでいた・・・しばらく背中をさすってあげたら落ち着いてきた

「ごめんな・・ひとりにして」と謝る彼・・・
ひとりで起きていることなんかよりも・・
痛みを越えて 彼が謝ることのほうが切なかった・・・

今夜は オリオン座流星群・・・
そして来月は 彼と出逢った獅子座流星群がやってくる・・・
南阿蘇で見た星空を そして、その時の彼をふと思い出してしまった