モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬を増量しても、
痛みが緩和されない時、疑われるのが神経障害性疼痛(神経因性
疼痛)です。癌が末梢神経や中枢神経を浸潤したり、圧迫したりして
生じる痛みとされます。

たとえば、頭頚部がんのような耳鼻科領域のがんは、
狭い骨の間にたくさんの神経が走っていて、がん細胞が神経を
損傷させたり、がんが転移した部分の骨が崩れて神経を破損する
ケースが非常に多いのです。
肺尖部に起こるパンコーストタイプの肺がんは、肺上部の神経叢に
入り込んで、激しい痛みを起こします。肺がんや乳がんが胸壁に
転移すると、肋間神経を巻き込んで、これも我慢できないような痛み
を誘発します。
また、膵臓がんが腹部の神経叢に入り込んだ時に起きるのが、
いわゆる膵臓痛と言われる痛みです。
胃がんの進行によって起こる、がん性腹膜炎の痛みなども、
神経障害性疼痛のひとつにあげられます。

患者のみならず、医療者側も苦労するのが、骨盤内にある臓器に
癌が再発したときだと言われています。
結腸、直腸がん、泌尿器科や婦人科領域のがんです。
骨盤内には、いろいろ神経の束があり、再発して増えた癌がそういう
ところに入り込んだ時がやっかいで、坐骨神経叢や、仙骨神経叢を
圧迫したり、浸潤破壊して、激しい痛みを引き起こすのです。

鎮痛補助薬は、モルヒネやNSAIDsなどの鎮痛薬の効果が
あまりなかった場合に併用されるもので、もともとは徐痛以外の
目的で開発された薬です。
現在使われているのは、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬、
NMDA受容体拮抗薬、ステロイド薬等です。

鎮痛補助薬を選択する際のポイントとして、
ビリビリと刺すような痛みなら、抗けいれん薬・・
ピリピリと痺れるような痛みなら、抗うつ薬・・と、一応痛みの性格に
応じた選択をしますが、キレの良さでは抗けいれん薬のほうが
上なので、まずそちらを最初に使うことが多い。それでも痛みが
残っているようならば、今度は抗うつ薬、もしくは両者を併用。
癌が神経を圧迫しているようだったら、ステロイド製剤を使用します。

ステロイド製剤の徐痛作用は、体内の発痛物質の分泌を抑える事
にも関与しています。そのほか、食欲不振や倦怠感の緩和にも
有効です。ただ、鎮痛補助薬も眠気やふらつきなどの副作用がでる
場合もありますし、これらの薬は保険上、鎮痛補助薬として適応され
ていないので、使用の際は緩和ケア医やペインクリニック科の医師に
相談して欲しいと思います。

整理すると、神経障害性疼痛対策は、次の4つの柱で構成されている
第1段階は抗けいれん薬、または抗うつ薬・・
第2段階は両者併用・・
第3段階はケタミンやリドカイン・・
第4段階は神経ブロック、
そしてステロイド製剤、ビスフォスフォネート製剤、放射線療法は
段階に関係なく、病態に応じて使う・・

痛みのコントロールは、患者さんにとっては大きな問題です。
可能な限り、癌に伴うさまざまな苦痛を緩和することが
QOLを高め、癌と共存していくための必須条件とも言えるのです。

今回も向山雄人医師の文から引用をさせて頂きましたが
このペインコントロールに関する記事は、癌=壮絶な痛みに
悶え苦しみながら死を迎えるというイメージに、現在痛みを感じて
いない癌患者さんや、家族の方に知識として心に留めおいて頂き、
前記事でコメントでいただいたように、少しでも薬をすんなり受け入れ
られる体を維持してほしいとの願いから書かせていただいています。
薬の上乗せだけでは、自分らしさを感じることが難しくなります。
医学だけに任せるのではなく、上手に痛みをコントロールする
ことで、大切な時間を、かけがえのない大切な人たちと共有して
いただけたらいいなと心から願っています☆