癌の痛みに対しては、モルヒネを代表とするオピオイド鎮痛薬を
いかに効果的に使用するかが重要視されているが、必ずしも
すべての痛みに有効というわけではない・・・
なかでも、骨転移が引き起こす痛みには、モルヒネがあまり効かない
ケースが多々みられ、彼の場合もこのケースに当てはまりました。

骨転移を起こしやすい癌としては、まず乳がんと前立腺がん、そして
肺がんと腎臓がん、多発性骨髄腫などがあるようです。
骨転移は、しばしば鋭く激しい痛みを引き起こします。こうした疼痛は
なぜ起こるのか?

「骨の痛みが出現するメカニズムで多いのは圧迫や損傷ですが、
癌細胞自体、もしくは体が癌に反応して、さまざまな物質がでてくる。
その代表がサイトカインですが、これが過剰にでると、痛みの原因に
なったり、ある種の酵素が出て、細胞が傷つけられ痛みが起こる。
PH(ペーハー)の変化も痛みの要因のひとつだし、中枢神経の知覚が
過敏になることもある。
骨の中の破骨細胞の活動が激しくなって、骨を侵食してしまうことも
起こる。
いくつものメカニズムが組み合わされ、骨の痛みは引き起こされる
のです。

骨転移による痛みで、最近もっとも注目されているのが、
高カルシウム血症治療薬のビスフォスフォネート製剤である。

ビスフォスフォネート製剤の作用としては、破骨細胞の活動抑制や、
骨形成の促進、マクロファージに働いて痛みの原因となるサイトカイン
の産生を抑制することなどが確認されています。
また、実験段階ではあるものの、癌細胞に作用して、アポトーシスを
引き起こしたり、癌細胞が骨の表面にくっついて浸潤していくのを阻害
すると言われています。

WHOの癌疼痛ガイドラインで、第1段階で選択すべき鎮痛薬として
あげられるNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)も骨転移の痛みに
かかせない薬である。軽度の痛みだけでなく、中等度以上の痛みに
対しても、モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬と併用して使われる事が
多い。

また、骨転移の痛みに関しては、薬剤投与法以外に放射線療法も
頻繁に用いられる。徐痛率は70〜80%と非常に優れている。
放射線治療には、8グレイを1回だけかける単回法と、1日1回
2グレイを週に5回、3週かける(計30グレイ)分割法があるようです。
徐痛率は同じなのですが、効いている期間の骨の石灰化の度合い
病的骨折を抑える点などに関して、分割法の方が優れているという
報告も多いようです。
ただ、単回法も1回ですむという利点があり、患者さんの状態に
よっては、単回法のほうが適しているケースも少なくないということ
です。

放射線療法の特殊なものとしては、RI(ラジオアイソトープ)製剤を
注入する方法もあるようです。
ほかに、ペインクリニック科や麻酔科が行う神経ブロックも、有効な
方法のひとつで、これは痛みを中枢神経に伝える神経回路を、薬物
の注入などによって遮断してしまう方法です。

骨転移がわかったら、たとえ痛みがでていなくても、できるだけ
早いうちから、適切な対策を講じることが最も大切だという事です。


彼に対して本当の意味で納得のいくペインコントロールが出来た
のは、ホスピスでした。それでも右胸に突出してくる癌は、共存と
呼ぶには、あまりに辛い苦しい現実でした。
このブログを読まれたかたが、少しでも積極的に主体性のある
治療を選択されて、無駄な痛みに辛い時間を費やさないことを
心から願っています。

次回は、鎮痛補助薬のお話をしたいと思います。

 

                      この内容は、向山雄人医師の記事を元に書いています。